インタビュー04 日本医療政策機構 シニアアソシエイト 今村 優子さんのお話

第1回:つらくても我慢しがちな女性の不調に対処するには?

月経にまつわる悩みを抱えながらも、うまく対処できずにいる女性がなんと半数以上――。
こんな現状を変えて、女性がいきいき輝くためには「ヘルスリテラシー」を身につけることが大切と今村優子さんは言います。
助産師として、また日本医療政策機構の一員として活躍されているご経験から、
若い世代や働く女性を取り巻く現状について伺いました。

Q1.今まで多くの女性の医療・ヘルスケアに携わってこられたと思いますが、
心がけていらっしゃったことはありますか?

助産師として働いていた当時、最も力を入れていたのが妊婦さんの出産に対する意識や行動を前向きに変化していただくための取り組みです。実は妊婦さんのなかには、臨月に入っていたり陣痛が始まっていたりするにも関わらず、出産がどのように進むか理解されていない方も少なくありませんでした。そんな妊婦さんたちに出産に対する意識を変えて、妊娠末期や出産時にどのように行動したらよいかを知ってもらうために、育良クリニックでは「産むぞクラス」という出産直前クラスを開催して、毎月約100名の妊婦さんを対象に講義をしました。また、普段の妊婦健診や母親学級・両親学級などでは、妊婦さんが妊娠中から産褥期の身体やこころの変化にうまく適応していけるよう、わかりやすくアドバイスすることを心がけていました。

臨床現場での経験から女性の妊娠や出産に関する国レベルの政策策定を学ぶ必要性を次第に感じるようになり、イギリスへ留学を決意。シェフィールド大学の修士課程で、公衆衛生についてじっくり勉強することができました。現在は日本医療政策機構に参画し、おもに女性の健康プロジェクトに取り組み、医療や医療制度に関する世論調査なども行っています。また、大学生を対象にヘルスリテラシーや性に関する講義をするなど、助産師としての活動を通じて多方面から女性のヘルスケアに携わっています。

Q2. 若い世代の教育にも携わっていらっしゃるとのことですが、
大学ではどのような授業をされているのですか?

今年(2018年)、3つの大学で特別授業を担当しました。授業前に約600人の学生にアンケート調査をして驚いたのが、「月経時の出血の量が多い」「月経痛で授業に集中できない」などの月経異常を訴える学生が5~6割、PMS(月経前症候群)に悩む人は7~8割もいたことです。それなのに、婦人科を受診したことのある人はほぼゼロ。中高生のときに月経について学んでいるにも関わらず、若い女性の多くが月経異常やPMSにどう対処していいかわからないと知り、ショックを受けました。

そこで授業では、婦人科検診の流れを写真で見せながら、「内診台が淡いピンク色だったり、診察室や待合室に緊張をほぐすための工夫をしている病院やクリニックが多いです」「性行為の経験のない人は、おなかの上から超音波検査が受けられます」などと説明しました。婦人科って、そんなに怖いところじゃないよと伝えたかったんです。

授業から3ヶ月後にもう一度アンケートをとったらうれしい変化が!「月経への意識が変わった」という学生が7割にも上り、「月経に関する行動が変わった」人が3割もいました。なかでもアプリなどを活用して月経の記録をつけるようになった人が多く、婦人科を受診した人も1割まで増えました。「月経はただつらくて、イヤなものだと思っていたけれど、月経の仕組みや意味を知ったら婦人科に行く必要性がわかりました」とコメントをもらい、とてもうれしかったですね。

Q3. 働く世代の女性は、月経異常やPMSにきちんと対処できているのでしょうか。

実は、そうでもないんです。私が所属している日本医療政策機構が18~49歳の働く女性2000名を対象に調査をしたところ、過去や現在に月経異常があった人は約50%、PMSの症状があった人は約70%もいました。でも、それに対して「何もしていない」人が月経異常では約45%、PMSでは約63%と一番多かったんです(「働く女性の健康増進調査2018」より)。若い学生だけでなくキャリアをもつ女性でも、自分の健康を守るための対策をとらずに放置する人が多いという悲しい現実です。

この調査の中で、「PMSや月経にともなう不調で、あなたの仕事のパフォーマンスは普段と比べてどれくらい変わりますか?」と質問してみました。元気なときを10点として自己採点してもらったところ、9割以上の人が「パフォーマンスが下がる」と答え、5~0点と半分以下に下がる人が約半数でした。

出典:「働く女性の健康増進に関する調査2018」(日本医療政策機構)

Q4. 女性特有の不調にはどう対処したらいいですか?

その答えの一つが「ヘルスリテラシー」を身につけることです。リテラシーとは、情報に積極的にアクセスし、その情報をかしこく活用するための能力のこと。ヘルスリテラシー、つまり健康に関するリテラシーがあれば、健康についての正しい知識を選び取り、健康トラブルが起きたときに対処する力がつくので、女性特有の不調が起きたときも自分の体を守れるようになります。

また、仕事や勉強、プライベートでも充分なパフォーマンスが発揮できて、自分らしく生き生きと過ごせるのです。私たちの調査では、「女性に関するヘルスリテラシーの高い人のほうが、PMSや月経にともなう不調があるときでも仕事のパフォーマンスが高い」という結果が出ています。

ヘルスリテラシーを身につけるために必要なアクションのひとつが、婦人科受診です。婦人科で検診を受ければ、自分の身体についてきちんと把握できますし、変化や心配事があれば婦人科の先生に質問できます。病気を早期発見するだけでなく、将来の妊娠や出産に備えるための大切な準備にもなりますから、年に一度の受診を習慣にしましょう。

出典:「働く女性の健康増進に関する調査2018」(日本医療政策機構)