女性のライフプランニングとピル

月経に振り回されない女性になろう

司会 仕事とプライベートの両立の悩み、特に妊娠・出産に関する悩みは尽きないようですね。
そんな女性のライフプランをサポートしてくれる経口避妊薬(OC)が認可されたのは20年前の1999年。
北村先生、当時の状況をお聞かせいただけますでしょうか。

北村先生 OC発売日のことはよく覚えています。
朝9時、海外メディアなど大勢の人が私のクリニックに集まって、大変な騒ぎでした。懐かしいですね。

司会 皆さん、OCのことは知っていましたか?

Kさん 私はOCという言葉すら知りませんでした。

Sさん 私は低用量ピルのことは知っていましたが、OCという言葉は知りませんでした。

Fさん
私は学生の頃は本格的にスポーツをしていて、自分も周りの子も何カ月も生理が止まってしまったりしていました。
ピルを使っていた人もいたと思います。
大人になってからは周期的に生理が来るようになったのですが、今度は生理痛に悩まされるようになって。
生理がつらいのでピルを使いたいと思うのですが、母からは「ピルは悪いもの」と言われていて、それが頭に残り、試せずにいます。

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北村先生 親御さんの世代では、確かにそういうイメージが根強いかもしれませんね。
しかし、現代は女性活躍の時代、月経に左右されるのではつらいですよね。人間本来が持つ動物としての"性"と、女性が働き続ける現代社会における"社会性"とは、異なるものです。
私は"月経を支配する"と表現しているのですが、低用量ピルを使って月経トラブルをコントロールし、自身が望むライフプランを作っていくことは、女性の活躍を応援することでもあると思っています。
ぜひ皆さんには月経トラブルに翻弄されることなく「月経を管理できる女性」になってほしいですね。
実は低用量ピルには、治療目的のものと避妊目的で使用されるものがあります。個人差もありますが、この前も私の患者さんに聞いたら、低用量ピルを使う前の月経のつらさを10とすると、低用量ピルを使うようになってからは2か3だと言うんです。

Fさん 人によってはそんなに違うのですね……。副作用はどうですか?

北村先生 吐き気や頭痛などの副作用を心配される方もいらっしゃいますが、症状が出たとしても、多くの場合、飲み始めから2、3カ月でおさまります。心身に気になる症状がでた場合には、主治医に相談するとよいでしょう。
また、低用量ピルを服用することで血栓症のリスクが高くなるという報告もありますが、妊娠中の血栓症リスクより低いのです。(1)
病気で処方される薬とは違って、低用量ピル、中でもOCについては健康な女性が服用することもあり、世界中で長い年月をかけてたくさんの研究がなされてきました。
その恩恵を現代女性は受けることができるのです。

Sさん ピルを飲み続けていても、服用をやめたらちゃんと妊娠できるんでしょうか。

北村先生 はい、できます。誤解されている方も多いのですが、海外の臨床データから低用量ピルを長く飲み続けている人ほど、低用量ピルをやめたら妊娠しやすいという報告もあります。低用量ピルの服用期間が2年以下の人に比べ、12年以上飲んでいる人は1.28倍も妊娠しやすいというのです。(2)

Eさん
それはどうしてなんですか?

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北村先生 低用量ピルを飲み続けることで、ホルモンバランスが整います。排卵を抑えることで卵巣を保護するためではないかと考えられます。
昔は、女性の生涯の月経の回数は50回ほどと言われていました。妊娠し、出産したら授乳期間があって、また妊娠という繰り返しで、人生のうちで月経のない期間が長かったんですね。しかも、閉経になる年齢も早く、平均寿命も短かった。だから生涯の月経回数は少なかったのですが、今ではなんと450回ほど。
月経痛などのトラブルのある方では、毎月の排卵を抑えたり月経回数を減らすなどの治療を検討することも現代女性にとっては大切なことなのです。

Eさん もっと早くからピルについて知っていれば、キャリアを積む上で役立ったように思いますよ。子供を持つことよりも仕事を優先させたことがあったので。

北村先生 そうですね。早い段階で低用量ピルについて正しい知識を持つことが大切ですね。
低用量ピルを服用することで頻度は少ないとはいえ服用初期や喫煙や肥満、年齢などにより血栓症のリスクが高まることが知られており、適正使用のガイドラインでは喫煙者や40代では慎重投与となっていて、他の避妊法、治療法をおすすめすることが多くなります。
どの薬剤が自分に適しているのか、婦人科医と相談して選択していって下さい。

OCは女性が主体的に
コントロールできる避妊法

司会 女性がOCを使うことで、"自分の体やライフプランをきちんと考え、自分が責任を持つ"という意識も高まりそうですね。

北村先生 もちろんです。
みなさん、"避妊"って「男性がコンドームをつければOK」と思っていませんか?

一同 (うなずく)

北村先生 実際にどのような避妊方法を女性が選んでいるのかを私たちが調査したところ、コンドームが82.0%、膣外射精が19.5%、オギノ式7.3%、ピル4.2%と、コンドームが圧倒的でした。(3)
でも、コンドームはきちんと着用していなかったり、外れてしまうこともある。そして"男性主体"の避妊方法です。
それに比べてOCは"女性主体"。でも「OCを使っていれば、コンドームは要らないんじゃないか」というのもまた大きな間違いで、コンドームは"性感染症予防"のために、絶対に必要なものです。

Fさん そうなんですね。

北村先生 そしてもう一つ大事なことをお話します。
良いSEXに必要なのは、お互いに"合意していること"が大切なポイントです。
自分がしたくないのに、「彼がしてほしいと言うから」「愛してるって言われたから」と求めに応じてしまうのは、本当の愛ではありません。SEXは、お互いの"合意"の上に行ってこそ、対等な関係と言える。
そう思いませんか?
日本では、こういう話をすることは"恥ずかしい"という風潮がありますが、パートナーとはもちろん、親子や、友達同士でも、もっとオープンに話せたら良いなと思います。

司会 ネットでは、さまざまな情報が飛び交っていて、振り回されてしまう人も多いと聞きますが。

北村先生 それは、我々、医療関係者にも責任がありますね。
正しい情報を、必要とする人たちに、きちんと届けられていないわけですから。
この現状は、なんとかしなければと思っています。
そして、体の不調を感じた時は、インターネットなどの情報をうのみにするのではなく、婦人科を受診してください。

Sさん 婦人科はなんとなく怖いというイメージがあります。

北村先生 婦人科はオバケ屋敷じゃないんですから(笑)。
かかりつけのドクターがいれば、些細なことでも相談できるようになります。
低用量ピルについても、正しい知識を得たり、不安を解消するには、ぜひ婦人科へ足を運んでもらえればと思いますね。

Kさん どうやって自分に合った婦人科を見つければいいんですか?

北村先生 友だちの評判を聞いたり、あとはまずは電話してみることですね。
受付の人の対応などでよさそうだと思ったら、一度受診してみてください。

司会 今日は座談会に参加して、どうでしたか?

Eさん 子どもを持つことについて、今一度、パートナーと真剣に話し合おうと思いました。

Fさん 今は、モデル業を全力でがんばりたいので、ピルについて正しく知って活用できるようになりたいという気持ちになりました。

Sさん 産婦人科を受診して今の自分の体をちゃんと調べて、あらためてライフプランをどう作っていくのか考えたいです。

Kさん 自分の体を大切にすることと、ピルへの誤解が払しょくされました。

司会 北村先生、みなさま、今日はありがとうございました。

参考資料

  • 1.

    The Society of Obstetricians and gynecologists of Canada: Position statement: Hormonal Contraception and Risk of Venous Thromboembolism (VTE) 2013

  • 2.

    Ellen M. Mikkelsen, et al.: Human Reproduction, Vol.28、No.5 pp.1398-1405,2013

  • 3.

    日本家族計画協会:「第8回男女の生活と意識に関する調査」,2017